記憶という海の中で:トラウマは消せるのか?
脳のメカニズムとNLP・EMDRでたどる再生の道
トラウマから抜けられず苦しんでいるあなたへ
はじめに:なぜあの記憶は消えないのか?
忘れたい。
思い出したくない。
そう願っても、強烈な体験の記憶はふいに心を襲います。夜中にフラッシュバックとして蘇ったり、日常のちょっとした音や匂いで当時の感覚が戻ってきたりする。まるで、心の奥に沈んでいる「海の底の記憶」が、嵐のたびに波に押し上げられるようです。
では、トラウマの記憶は本当に「消す」ことができるのでしょうか?
答えは単純ではありません。しかし、希望があります。過去の出来事をなかったことにすることはできませんが、「記憶の持つ意味」や「感じ方」を変えることはできるのです。
本記事では、脳の仕組み・心理学の理論・最新の研究、そして実際のカウンセリングや私自身の体験から、トラウマの記憶にどう向き合えばよいのかをお伝えします。
脳の記憶の仕組み
私たちの脳は、日々の出来事をすべて録画しているわけではありません。脳は「必要な情報だけを残す」仕組みを持っています。
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符号化(ふごうか)
体験を「記憶に残すためのデータ」に変換する段階です。
このとき、強い感情を伴った出来事は、脳の「扁桃体」という場所が大きく反応し、恐怖や不安の印象を強めてしまいます。 -
貯蔵(ちょぞう)
短期記憶が長期記憶に移される段階です。通常なら「海馬」という場所が情報を整理して「過去の出来事」として保存しますが、強いショック体験の場合、海馬が混乱し「生々しい記憶の断片」として保存されやすくなります。 -
想起(そうき)
一度保存された記憶は、思い出すたびに少しずつ変化します。想起のたびに新しい情報や感情が加わり、再び脳に保存される。これを「再固定化」と呼びます。
つまり記憶は「固定されたもの」ではなく、思い出すたびに更新される「生きた情報」なのです。
トラウマ記憶の特徴
通常の記憶とトラウマ記憶には違いがあります。
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断片的で感覚的:まるで写真や動画の一コマのように鮮明に浮かぶ。
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言葉にしにくい:ストーリーとして語ることが難しい。
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現在進行形で蘇る:フラッシュバックのように、「過去」ではなく「今起きていること」として感じる。
心理学では、記憶を「言葉で語れる記憶」と「感覚でよみがえる記憶」に分けて説明します。トラウマは後者が強く、語ることが難しいため、本人を余計に苦しめるのです。
NLPが示す「記憶の歪み」
NLP(神経言語プログラミング)では、人は現実をそのまま覚えているわけではなく、脳が勝手に「省略」「歪曲」「一般化」を行っていると考えます。
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省略:必要ないと思った情報を無意識に削る。
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歪曲:出来事を解釈する際に歪んで受け取る。
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一般化:一つの体験から「私はいつもダメだ」など全体に当てはめてしまう。
たとえば、過去に失敗をした体験が、「私は価値がない」という強い信念(ビリーフ)につながってしまうことがあります。
しかし、これは「捉え方のフィルター」が生み出したものであり、書き換えることが可能です。
記憶を書き換える「再固定化」の研究
近年の脳科学研究では、記憶は思い出すたびに「揺らぐ」ことが分かっています。そのタイミングで新しい情報を加えると、記憶は修正されて保存されます。これを「再固定化」といいます。
米国の研究者ダニエラ・シラーらは、恐怖の記憶を呼び起こした直後に安全な体験を与えることで、恐怖反応を大きく減らせることを報告しました。ただし、研究によっては再現が難しい場合もあり、万能ではありません。
それでも「記憶は完全に固定されているのではなく、変えられる余地がある」という希望を示した大切な発見です。
EMDRというアプローチ
EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)は、トラウマ治療で国際的にも有効と認められている方法です。
やり方はシンプルで、トラウマ記憶を思い浮かべながら、眼球を左右に動かす・手を交互にタッピングするなどの刺激を加えます。これによって脳が記憶を処理し直し、苦しみを軽くするのです。
研究によって、EMDRはPTSDの症状を減らし、不眠や不安を和らげる効果があることが示されています。最近では、詳しく語らずに実施できる「フラッシュテクニック」も開発され、安心して取り組める方法が増えています。
私自身も、性被害の記憶に長年苦しんできました。何度もフラッシュバックが起こり、あの場面が繰り返し蘇っては、呼吸が苦しくなり、眠れない夜を過ごしたこともあります。
けれどもEMDRを受けてからは、その強烈な場面を“思い出せなくなった”のです。完全に出来事が消えたわけではありませんが、苦しめられるほどの鮮烈さを失い、心の奥に静かにしまえるようになりました。
この経験から、私は「記憶そのものは消えないけれど、苦しみの重さは変えられる」という事実を、身をもって体感しました。
実際の変化の事例
ここからは、私のカウンセリングで実際に起こった変化を紹介します。
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自分のついた嘘で人を傷つけた方
「自分のついた嘘で人を傷つけてしまった」と何年も自分を責め続け、夜も眠れなかった方がいました。カウンセリングを重ね、NLPのビリーフチェンジや記憶の再処理を行った結果、「思い出すことはあるけれど、もう眠れないほど苦しくはない」と言えるようになりました。 -
学校での失敗から人前で話せなくなった方
大きな失敗の経験が原因で、人前で話すことが怖くなっていた方がいました。恐怖症を手放すセッションを経て、ついにプレゼンを堂々と行えるまでになりました。「あの記憶は残っているけれど“私は話せない人”という言葉の意味はなくなった」と話してくれました。
トラウマ記憶は「消える」ではなく「軽くなる」
まとめると、トラウマ記憶を完全に消すことは難しいといえます。
しかし、脳の仕組みや心理療法を使うことで、その重さを軽くし、意味を変えることはできます。
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記憶そのものは残っていても、苦しみは減らせる
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失敗や恐怖の記憶も「学び」や「力」に変えることができる
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脳は柔軟で、何度でも「再生」できる
これは誰にでも起こりうる変化です。
こころケアWithからのメッセージ
「もうあの記憶に苦しめられたくない」
「過去を思い出すたびに涙が止まらない」
そんなあなたへ。
こころケアWithでは、NLPやカウンセリング、EMDR的アプローチを使って「トラウマ記憶の書き換え」を行っています。過去を消すことはできませんが、あなたの未来は変えることができます。
どうか一人で抱え込まないでください。
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